2022.11.25
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知りたい、気になるから始まる!リサーチの進化への貢献 【from talentbook】


幼少期から興味のあった日本に、高校卒業後に移り住んだアフィカ・アディラ。株式会社インテージの事業開発本部先端技術部で、マーケティングリサーチの進化に向けて、必要となる技術のサーチ・検証を行っています。彼女はどのようなことに可能性を感じて生体反応を研究テーマにしているのか、話を伺いました。

子どものころから身近だった日本。理系好きが原動力となり技術立国日本へ



▲マラヤ大学予備教育部日本留学特別コースの日本語教科書の一部

マレーシアで生まれ育った私が、日本を知る最初のきっかけとなったのは、日本のアニメでした。子どものころに放映されていた日本のアニメに触れたのが始まりです。高校生のときに、本田技研工業株式会社のASIMOが発表されたときには衝撃を受けました。もともと化学や物理学が好きだったということもあり、高校を卒業したら技術立国日本に留学しようかなと思うようになりました。

高校を卒業してから2年間、マレーシアで日本留学プログラムに参加しました。宿題も多くて、最初の2カ月はとてもつらかったのを覚えています。初めて日本語を学ぶ私にとっては、このプログラムはとてもハードでした。でも、友達のサポートや良い先生に恵まれ、乗り越えることができました。

日本留学プログラムでは、語学はもちろんですが、日本で生活するにあたっての“日本の常識”や“日本人の価値観”などを学びました。一番のギャップがあった文化の違いは、時間感覚でした。マレーシアは、結構時間にルーズです。日本語学校では、日本で生活をするときに困らないように、日本基準で時間を管理するので、遅刻に対して非常に厳しかったです。そういう概念を一つひとつじっくりと学んでいきました。来日してからは、電車が時間通りに来ることと、電車の時間に間に合うように早歩きする人々の姿にとても驚きました。

マレーシアと日本は、文化も働く環境も違います。他の国について知ろうと思ったときには、そういった違いをうまく理解して、適応していくことがとても大切だと思います。とはいえ、一方的に他国の文化に合わせて、自分の特徴を失うことは避けたいです。お互いの良いところを活かしていければベストだと思いますし、そういう考えを受け入れてくれる風土だといいな、と思います。

そういう意味では、インテージはとても理解がある企業だと思います。たとえば、私はイスラム教徒なので、1日5回のお祈りが欠かせませんが、しっかりと理解してもらえています。

日本で働いてみて改めて感じた“日本人の価値観”の中で、人の役に立つという貢献意欲や課題を解決する熱心さは素晴らしく、自分にとって大きな学びになっています。日本で働くうちに、「自分の仕事の枠内にとどまらず、周りにどう貢献するかという意識をもって物事にあたる」ということを、以前より意識するようになりました。

リアルなデータへの渇望が研究の日々を後押し。多様性に富んだチームメンバーも支えに



▲先端技術部 研究開発グループ

大学では、機械制御システムを専攻しました。夏はベトナム出身の友人とロボット製作にも取り組みました。大学の研究室を決めるタイミングでは、興味のあった制御システムに近い、人の動きや体内の制御を担う脳の仕組みを研究している研究室を選びました。研究方法には、仮説を検証する方法として実験またはシミュレーションの2通りありますが、シミュレーションして結果を得る方が、自分一人で没頭できるため、私の性格に合っていたように思います。一方で、シミュレーションだけでは、「本当はどうなるんだろう」と気になるな、と実験への興味も沸いていきました。

最初に入社した会社では、表情解析技術を用いるアプリ開発やサポートを担当しました。新しい技術やトレンドに触れ、多くのことを学べましたが、自社でデータを収集し検証することはありませんでした。そこからデータを用いて実証したい、という気持ちが強くなり、質の良いデータを多く持っていることを期待して、インテージに転職したんです。研究室のときから「リアルなデータへの渇望」があったからこそかもしれません。

インテージでは、事業開発本部 先端技術部 研究開発グループというチームに所属しています。チームミッションは 生体反応を含めたインテージにおいて必要となる技術のサーチを行い、検証し、事業開発への支援や研究開発につなげることです。日々、世の中の動きにアンテナを張って、今何が流行っているのかを見極めたり、学会への参加や業界紙を読んだりして先行研究からヒントを得ています。そして、狙いを定めたテーマに対し、さらに先行研究を深掘りした上で、実験内容を1~2カ月かけてまとめます。その過程では、仮説があっているか確認するプレテストをすることもあります。

チームのメンバーは、マーケティングリサーチャー、行動経済学に詳しい人、自然言語処理に詳しい人など、多様性に富んでいます。異なるバックグラウンドを持つメンバーで議論をすることで、さまざまな視点が出てきてとてもおもしろいです。

研究テーマは「仕事中のストレスを測定する」。被験者の本音を生体反応から捉える



▲脳波計を用いたストレス計測のプレテスト

2022年8月現在、「仕事中のストレスを測定する」というテーマで研究に取り組んでいます。適度なストレスであればパフォーマンスや集中度合の向上につながるものの、過度なストレスはパフォーマンスを低下させ、健康にも影響してしまうことから、さまざまな職場において、ストレスチェックが行われています。

ストレスの度合いを測定するにあたって、本人のアンケートによるものもあれば、ストレスを感じる際に変化する生体反応を用いてより定量的に測る手法もあります。定量測定を行う場合は、生体反応の種類や計測機器もさまざまなので、事象をよりよく捉え、再現性のあるものを選ぶことが重要になってきます。

ストレスの測定には、まず、ストレスを計測するのに有効な生体反応を特定するために、プレテストを行いました。プレテストでは、脳波、発汗や脈波を測定しましたが、発汗は非常に個人差が大きかったため、安定した数値を取れる手段として脳波を選択しました。しかし、まだ課題が残りました。使用していた脳波計は前頭部分7カ所を計測することはできるものの、装着する際の被験者の負荷が大きく、研究室ではないオフィスや自宅などの自然環境下での計測が難しく、長時間にわたる計測には向いていなかったからです。

より幅広く活用できることや生体反応計測自体が被験者にストレスを与えないことを考慮し、次のステップとして、ウェアラブル機器を用いて測定し、検証することを決めました。具体的には、2週間にわたり、イヤホン型脳波計とFitbitを被験者の人に着けてもらい、仕事をしてもらいます。長時間計測のため、脳波のみでは、信号の揺れや変化を解釈することは難しく、仕事量や心理状態を簡易なアンケートで取得し、会議の参加状況などは被験者のスケジュールのデータを用いて、データにコンテキストを付与していきます。

また、精神状態の変動による変化と体の動きによる変化を区別する手段として、Fitbitで計測される歩数などのデータを活用します。さらに、Fitbitは歩数だけではなく心拍数も測定ができるため、脳波と合わせて利用することでより正確にストレスの状態を推定することにつながると期待しています。これらの結果から、被験者自身も気づいていないことにアプローチできたり、気づきを得られたりできるといいなと思っています。

リサーチの進化に生体反応を活かす。その有効性を証明するために研究は続く

実際に、他部署のメンバーからの相談を起点に始まる研究もありますが、連携するのはまだまだこれからです。先端技術部のミッションを果たすためには、研究テーマだけでは応用イメージがしづらいということを踏まえ、ある技術がどのように使えるのか、という事例をたくさん作り、展開することが大切だと思っています。

インテージのパネルデータであるSCIには、購買ログデータがあります。たとえば、「購入する」という一つの行動に対して、好きで購入するものと惰性で購入するもの(習慣的)があるのではないか。そこを、生体反応を用いて分けて把握することが可能だと考えています。

さらには習慣性になるものにはどういうものがあるのかという分析につなげられたら、リサーチの進化につながるのではないか。そんな風にも考えています。

今後、生体反応の有効性をより多くの方に知ってもらい、利用したいと思えるように、課題解決につながるような研究開発に励んでいきたいです。また、生体反応のみならず、ヒト・生活者の行動をより包括的に理解できるように、行動経済学や心理学のさまざまな分野から学び、研究に取り組んでいきたいと考えています。

SCI:全国消費者パネル調査。全国15歳~79歳の男女53,600人の消費者から、継続的に収集している日々の買い物データ

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(所属・役職は取材時のものです)

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カテゴリ:働き方