パラ陸上のルールについて~車いす陸上アスリート・北浦が解説!①


こんにちは、インテージグループ所属の車いす陸上アスリート・北浦春香です。

今回は競技規則についてご紹介したいと思います。パラ陸上のルールは基本的に一般の陸上ルールとほとんど同じです。

フライングスタート

陸上競技で最も一般的な失格の例はフライングではないでしょうか?
以前は1回目のフライングはOKとされており、2回目にフライングした選手が失格となるルールでしたが、「心理的揺さぶりを利用して、故意に1回目のフライングを行う選手がいること」などが問題になり、ルールが改正されました。
現在のルールでは、フライングは1回目で即失格となり、これはパラ陸上でも同じです。

セパレートレーン


ほかに挙げられる最も基本的なルールは、「100から400メートルまでのセパレートレーンで行われるレースでは必ず、自分のレーンの中を走行しなければいけない」というものです。
走行距離が変化してしまう理由から、内側のレーンを踏むと失格、外側のレーンは踏み越えた上で、隣の選手を妨害した場合は失格となります。
このルールは、立位であっても車いすであっても共通なので、車幅のある車いすの選手は特に注意が必要です。

特にコーナーの走行については選手自身のスピードに対し、遠心力が働くため、「速く走りすぎて外に膨らんじゃった!」というケースもあります。
大会では走行レーンを選ぶことはできませんから、選手としてはどのレーンでも走れることが基本原則ですが、「四年に一度の国際大会」のような大舞台であっても、この「レーンクロス」により失格になる選手もいます。
選手はトラックの質に対する自分のスピードや直線とコーナーの割合を把握した上で調整します。

視覚障害クラスへの対応


パラ陸上のルールで最も特徴的なのは視覚障害クラスへの対応です。
視覚障害クラスの内、T(走・跳躍競技)/F(投てき競技)11クラスは全盲の選手です。このクラスのトラック種目はガイドランナーと一緒に走りますが、投てきや跳躍競技ではガイドの声だけを頼りに一人で競技します。

走り幅跳びを例にとってみましょう。
ガイドは選手を助走開始位置まで誘導後、砂場の方向を選手に示します。ガイドは砂場の向こう側まで移動し、そこから助走を始める選手に向かって声を出したり、手を叩いたりしながら、踏み切りのタイミングを伝えます。

選手はガイドの声や音だけを頼りに自分一人で助走路を走って踏み切ります。ガイドの声がきちんと選手へと伝わるように、視覚障害のクラスの競技前には、観客は静かにするように促されます。
通常、応援とは声を出して盛り上がるものですが、視覚障害の選手に対しては声に出さない応援が求められます。パラスポーツならではのポイントだと思います。

暗闇の中をまっすぐに走る、見えない砂場に向かって声を頼りに飛ぶということが皆さんに想像できるでしょうか?
私個人としても、特に全盲クラスの選手の跳躍競技については想像を超えるパラスポーツのすごさがあると感じます!!

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