パラ陸上ってどんなスポーツ?クラス分けテスト編~車いす陸上アスリート・北浦が解説!④


こんにちは、インテージグループ所属の車いす陸上アスリート・北浦春香です。
前回はパラ陸上のクラス分けについて説明しましたが、今回は「クラス分けテスト」の内容を少し紹介したいと思います。

クラス分けの種類について

①国内クラス分け
選手が国内大会に出場する前に必ず受ける必要があります。
このクラス分けで得た判定は国内大会でのみ有効となり、国際大会へは参加できません。
また記録は世界ランキングには反映されません。

②国際クラス分け
海外で実施される国際大会に出場する、または記録を公認として世界ランキングに反映させるためには、必ず国際クラス分けを取得する必要があります。
このクラス分けにかかわる提出書類、質疑応答、動作テストはすべて英語で実施されます。

クラス分けテストの内容

クラス分けテストの対象となる選手はコーチ、通訳を帯同することができます。
クラス分け委員が二人ペアになって評価します。
仮にクラス分け委員が日本人であったとしても、やり取りはすべて英語で行われます。
クラス分けの流れは以下のとおりです。


はじめは自分の障がいについて、いつ競技を始めたのか、どれくらいトレーニングをしているかなど、クラス分け委員により、いくつかの質疑応答が行われます。重要なことに、クラス分けの部屋に入り、互いに挨拶を交わした瞬間から評価が始まっています。
車いすをこぐ動作を観察されていたり、挨拶と同時に握手をしたりしただけで、握力を評価されていることもあります。
障がいの軽い選手が重いクラスへと判定を受けると有利に働くため、演技していないか細かく厳しく見られています。


質疑応答が終わると「ベンチテスト」に移ります。
ベッドに乗り移る、座る、寝る、寝返りを打つ、起き上がる、手足を曲げる・伸ばすなどの動作を観察され、どこまで筋力が効いているか、可動域があるかが評価されます。
30番台のクラスは上肢の協調性、巧緻性(手先の器用さ)が判定にかかわるため、ボールを持つ、投げる、つまむなどの指先の動作も評価されます。
原則として選手はクラス分け委員の指示どおり、全力で動作に応じなければなりません。
非協力的な姿勢が見られた時点でクラス分けテストは中止になります。

室内でのテストがすべて完了すると、選手はトラックへと誘導され、実際に走る「テクニカルアセスメント」が行われます。
車いすの選手は実際にレーサー(競技用車いす)に乗って走る様子を観察され、タイムトライアルを行い、自分の申告した自己ベスト記録と大幅な違いがないかを確認されます。

すべての評価が終わるとクラス判定結果がもらえますが、この日だけで判定が下りない場合は、「競技観察」という最終ステップに移ります。
「競技観察」とは、選手に暫定のクラスが与えられた上で大会の競技に参加し、レース終了後に最終のクラス判定結果がもらえるというものです。
選手としては、自分のクラスが確定しないまま競技に参加しなければならず、非常にストレスとなります。


世界を目指すにあたって、特に日本人の選手には国際クラス分けが一番のハードルになっているといえます。
国内には国際クラス分けを受けられる大会がなく、必ず個人で海外遠征しなければなりません。かつ、英文で書かれた自分の障がいの診断書を揃え、自費で通訳を帯同させなければなりません。
選手自身の英語力が必要なのも事実ですが、クラス分けに関しては、障がいや医学的な知識に関する専門的な英語力も必要になります。「アスリートファースト」を追求する環境として、サポートできる人材の不足も深刻だと感じます。
英語力がすべてではありません。しかし、海外で自分自身で対応できる幅が広がったり、世界の選手の情報が集められたり、いろいろな意味で自分の可能性を広げられるツールであると思います。

以上、今回はクラス分け裏話でした!

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