2019.08.26
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働き方改革インタビュー vol. 6 ~株式会社協和企画 代表取締役社長・山田 淳史


今回のインテージグループ働き方改革インタビューは、医療専門の総合広告会社である株式会社協和企画の代表取締役社長・山田 淳史(やまだ あつし)に、「インテージグループ『働き方改革』プロジェクト」マネージャー・松尾 重義(まつお しげよし)が 取組みへの想いについて聞きました。

自身の経験と働き方への想い


松尾:
協和企画では19年5月より、「対象者の指定や事前申請の必要ないフルフレックス(コアタイムのないフレックスタイム)・リモートワーク」を全面的に導入されました。山田さんは今、この取組みを実施することに対して、どのような想いがありますか?
山田:
少し遡りますが、私は新卒で広告会社に入社し営業に配属され、気が付けば起きている時間の大半は働いていて、睡眠時間を何とか確保するという生活を送っていたことがあります。特に上司から強要された記憶はありませんが、そもそも会社も、業界自体もそういう風土でしたし、自分で仕事が獲れるようになると、どんどん面白くなっていくので、それと比例して働く時間も青天井で増えていきました。
しかし、ある時ふと気づきました。ほとんどの時間を企画・提案・実施、という「アウトプット」に費やしているため、経験値はどんどん上がりますが、企画の根幹であり、「アウトプット」で最も重要な”アイデア”が枯渇していく、つまり、似たようなアイデアしか出せなくなるという症状が出始めました。「インプット」しないと「アウトプット」には限界がある、という当り前のことに気付いたわけです。我々にとっての「インプット」とは、映画を見たり、音楽を聴いたり、本を読んだり、いろんな人とコミュニケーションをとったり、イベントに参加したり…、心に栄養を与えることは勿論、そこから様々な手法を類型化し、アイデアの引き出しを沢山作る、そして何より世の中の空気をリアルに感じる皮膚感覚を磨くことです。しかし、この「インプット」をおろそかにしてしまうと、「アウトプット」は徐々に先細っていきます。更には長時間をアウトプットに費やすと、しまいには給料の対価として自分が提供しているのは労働時間なのではないか、という錯覚に陥ったりもします。報酬はあくまで、成果や貢献への対価であるべきなのに、その本質を見失っている状態になっていました。
松尾:
働く「時間」、中でも量としての時間とのかかわり方についてですね。
山田:
働く「時間」が長いと、「インプット」を怠る言い訳にしやすい。「忙しいから〇〇出来ない」ということですよね。では成果を落とさず、どうやって「インプット」の時間を確保していくか、ということですが、全ての業務に同じエネルギーを注いでしまうと、当然時間は足りなくなります。処理能力を上げることも大事ですが、やはり重要度や緊急性と照らし合わせて優先順位を決め、エネルギーと時間を意識的に配分するしかありません。
部長になりたての頃、部員の提案準備によく明け方まで付き合っていたのですが、ぎりぎりまで面倒見ても、その後任せるとミスをする、また更にぎりぎりまで面倒見る…、という悪循環を起こしたことがあります。そうすると自ずと自分の「インプット」の量は減ってしまいますので、上司として的確なディレクションやアドバイスが出来るかどうかにも影響してきます。ちなみに営業の日課は日中帯の外回りから帰社して、スタッフに情報をシェアしたり、打ち合わせるとだいたい20時くらいに自席に戻り、やっと自分の業務が出来る状態になります。つまりここからが営業のゴールデンタイム、というわけです。
しかし、既に起こしかけていた悪循環を断ち切るために、上手くいく確信はなかったですが、あえてそのゴールデンタイムが始まる20時までには「帰る」ということを部員に宣言しました。ゴールデンタイムに「帰る」というのは、いわば部下を見捨てて帰ることにも感じられて、最初の頃は私自身が結構きつかったです。
しかし「帰る」ことを宣言して以降、当然私の総時間が減ったので、営業内の打ち合わせは1時間が30分に、30分が15分にと、どんどんコンパクトになり、部員たちも限られた時間で相談するために、準備万端で臨んでくるようになりました。そして3か月もしたら今度はミスがどんどん減り始めて、しまいにはほぼなくなる、という結果になりました。恐らく遅くまで私がいた頃は、「そこにいる」という安心感に部員たちが寄りかかっていたのかもしれません。あるいは、20時までに私が帰ることで、最後は自分で責任を持たないと、夜中にトラブっても上司はいない、という緊張感が生まれたからかもしれません。そもそも遅くまで上司にいられると帰るに帰れなくて実は嫌がられたとか…(笑)。これは今でも大きな教訓として、私の中で生きています。
それと、あの当時と比べ技術的に様々な時短ツールが格段に進歩した今なら、もっと時間に対して柔軟に、そして効率的に取り組むことは可能なはずです。我々の世代はどうしても人の何倍も働いて、より多くの成果を出す、というカルチャーが身についてしまっていますが、我々自身が「短い時間で最大の成果を出す」ことこそがカッコイイ、という風に意識を変えていかなければなりません。

なぜ協和企画で取り組むのか


松尾:
「働く」ということについて、以前から考え、取り組んでこられたと思いますが、改めて協和企画で目指したい姿を教えてください。
山田:
このような思いもあり、5年前に協和企画に来た際に、まずは社員全員の勤務時間を知るところから始めました。一般の広告業界でイメージされるような、極端な形で働いているという状況では全くなかったのですが、そうはいっても自分自身のコンディションを高めていくために、働く「時間」は、その質と量について改めてきちんと取組むべきテーマだと感じました。
私自身は前職40年間のほとんどが営業職でしたが、協和企画に来る直前2年ほど、クリエイティブ部門のマネジメントをやっていました。広告業界は男社会と言われることもありますが、アートディレクターやコピーライターを中心に、クリエイターは女性が非常に多く、そこで女性がライフイベントとキャリアを両立させることの難しさを目の当たりにしました。女性の力をもっともっと発揮してもらえるような環境づくりは、会社が積極的に彼女たちのリアルな声に耳を傾け、仕組みとして形にしていくべきだと考えるようになりました。
協和企画は約半数が女性社員ですが、女性に限ったことではなく、例えば子育てをしている社員が、お子さんの急な発熱や体調変化があっても安心して見守ることができ、評価やキャリアに支障をきたさない環境をつくりたいと考えました。そのために、これまでもフレックス、裁量労働の導入、在宅勤務のトライアルなどを実施してきました。
インテージグループが掲げていた「時間と場所の自律的な選択」というコンセプトは、我々が取組んできた方向性とも合致しましたし、今回の取組みもグループをお手本に進めていくことができます。
この取組みは会社と社員との信頼関係、つまり「性善説」で成り立つものだと思います。会社が社員を管理する、もっと言えば監視する発想だと、自ずと「性悪説」に立つことになってしまい、目指す環境をつくるのは難しくなってしまいます。しかし貢献や成果を可視化できる仕組みと、この制度をセットで運用できれば、時間や場所に縛られる必要はなくなるはずです。もちろん制度導入後は細かい問題が出てくる可能性はありますが、インテージグループ各社が2017年から既に取組まれているため、問題の対処の仕方も自社の試行錯誤ではなく、グループの今までの経験値を参考にさせてもらえると思いますので、大変心強く思っています。
松尾:
協和企画で取組まれたい方向性と、インテージグループで掲げていた方向が一緒だったということですね。取組みを開始するにあたって、社員のみなさんからはどのような期待がありましたでしょうか。
山田:
オフィス移転に伴い、通勤時間が延びた社員もいたので、本格導入への期待は高かったように思います。子育てとの両立としても機能していくのではないでしょうか。 リモートワークについては、例えば紙の出力はオフィス以外ではできないというルールで開始していますが、それは社員を守るためでもあります。制度の運用と背景にある考え方をきちんと理解してもらうと共に、社員の声を反映しながら、できるだけ活用しやすい環境を作っていきたいと考えています。

「自立」に込めた想い


松尾:
この取組みを通じて、社員の皆さんと考えていきたい事はありますか。
山田:
一番重要なのでは、社員一人ひとりが「自立する」ということではないかと考えています。もちろん社員は会社に雇用されている契約形態をとっていますが、会社に依存するのではなく、個々が自立した存在になっていく。つまり、自分で判断し、その判断に責任を持つことで成長し、より高い成果を得ていく、ということです。働く時間と場所を自分たちで考え、もっとも成果を出しやすい状況を選択していける環境が、一つのきっかけになればと思っています。
松尾:
山田さんの中で「自立」を重視されている背景を教えていただけないでしょうか。
山田:
「ジリツ」は漢字として「自立」と「自律」がありますが、私は「自立」を重視しています。「自立」は、他に頼ることなく、自分自身が信じ頼れる存在であること。「自律」は、他から支配されることなく、自分自身が支配、統制すること。つまり前者は「存在」であり「あり方」、後者は「行動」であり「やり方」です。
広告会社のビジネススタイルによるところも大きいと思うのですが、任せる文化、裁量を持って自分で判断していく文化が業界としてもありますし、それがプロフェッショナルということかなと思っています。クライアントから相談を受け、一旦持ち帰って判断を仰いで、また戻って、ではスピードとして成り立ちません。
ひとり一人が責任を持って判断する、上長もきちんとその判断の最終責任を取る、そのような信頼関係と互いのプロ意識があれば、失敗こそが学習につながりますし、個々の自立を促していくことになります。
「自立」は、「独り立ちする」という意味を含むことも多いですが、協和企画でキャリアを積んで、そのキャリアを活かせる場所が社外にあるのなら、どんどん外へ出て活躍してもらって良いと思っています。協和企画がそういう会社であれば、キャリアを積むために意欲のある人が多く集まってくるようになる、そういう環境にこそ価値があると思うのです。自立するために、限られた時間をどう有効に活用するか、インプットの時間を確保しながら、より高いレベルのアウトプットを生み出すために、効率や生産性をどう考えていくべきか、そういう視点で自分をマネジメントしていく人たちが集まる会社になっていきたいですね。
更に、「自立」という意味を、決して会社の中だけで捉えるのではなく、自分の人生にとって、つまり「自立した人生を送る」という視点で取り組んでもらえると嬉しい、と思うんです。
自分の人生は、自分が主役なはず。しかし、いつの間にか誰かの人生の脇役を演じてしまっている、いうことはないでしょうか。そんなもったいないことはないですよね、だって自分の人生ですから。
「自立」するということはつまり、自分の人生を自分が主役として生きることではないかと思うのです。みんなが自立していくために、こうした環境がその後押しになればと願っています。その先に、この会社にいて自分の人生は結構イケてた、と思えるような、そういう状態を目指していきたいと思います。
「変わらなきゃ。」とよく言われますが、ひとり一人の「価値観」はそれまで生きてきた長い年月の中に培われたものなので、そうそう変えることは難しい。しかし「習慣」を変えることは可能です。変えるというよりは、今までにない「新しい習慣」を加えてみる、ということです。「新しい習慣」を始めると、今までにない「発見」があります。朝、家を出る時にまず空を見上げる、周りの景色を観察してみる、という簡単なことでいいんです。そうするとかならず「新たな発見」があります。そして「新たな発見」は「変化」を受け入れやすくします。
つまり「新しい習慣」が、「新たな発見」を生み、自然と「変化」を受け入れやすくしてくれる、ということです。
働き方の「新しい習慣」から、きっと「新たな発見」が見つかるはずです。そうなれば自分も知らず知らずのうちに変化していけるのではないか、と思います。是非、この新しい働き方から「新しい何か」を見つけてもらえたらと思います。

改めて大事にしたい「コミュニケーション」


松尾:
とくに社員のみなさんに伝えたい事はありますか?
山田:
この取組みが進むと、管理職はどのようにチーム力を最大化していくか、様々に悩むのではないかと思います。接触機会が減るとチームメンバーのメンタリティや、仕事で困っている様子など、もしかしたら分かりづらくなるかもしれません。いつも時間と場所を同じくしていると違いに気づきやすいですが、そうでない状況になると、どう取組むかは各々試行錯誤もあると思います。
時間や場所が非同期であっても、チーム力としては常に同期し最大化している状態を目指していきたいですね。
松尾:
コミュニケーションの重要性はより高まると思います。
山田:
例えば少しの時間でも良いので、月に一度は面談をするなど、コミュニケーションをしっかりとっていく「新しい習慣」を加える、というようなことも必要になってくるかもしれません。それも会社が強制するのではなく、それぞれが自発的に取り組んでいってもらえればと思います。仕事のパフォーマンスに影響を与えるものは、スキルや経験だけでなく、本人のプライベートも含めたコンディションは非常に重要なので、そうした見えにくい部分を互いに共有する仕組みはやはり大事ではないでしょうか。メールでは「Yes」と答えていても、本心は「No」ということもあると思います。本人の表情に触れないと本当はどう思っているかを伺い知るのは難しい。自分がマネージャーだった頃を振り返ってみると、メンバの一つ一つのしぐさ、色んな人との応対でコンディションを見ていたところもありました。この点は私も含めて、全員で試行錯誤をしていくということだと思います。
それと、直接案件に携わっている時間ではないけれど、学会に行ったり、考えたりしている時間も、価値を生み出すために貢献している時間でもありますよね。直接的な業務活動での貢献以外に、こういったものも可視化していくことも必要だと思いますし、取組みを進めながら必要なものを、全員で改善していくような進めた方をしていきたいですね。
チームで働く環境をどんどん改善をしていくサイクルが根付き、ひとり一人の柔軟性を高めながら、チーム力が最大化するように取組めたらと思います。
松尾:
この環境を最大限活用するという意味で、どんなイメージがありますか?
山田:
時間を有効に使う、という意味では、インテージグループは各所に事業所やタッチダウンエリアがありますので、そういったところも大いに活用してほしいですね。グループ傘下になってまだ半年ちょっとですから、「新しい習慣」を作るためにも、マネージャーが自らどんどん活用していくことで、みんなも利用するハードルが下がるのではないでしょうか。
我々のビジネスは無から「アイデア」という価値を生み出すものなので、やはり、ヒトが最大のリソースなんです。最大のリソースである社員ひとり一人のポテンシャルをいかに最大化していくか、良質なアウトプットを生み出すために、いかにインプットする時間を意識的に確保していくか、を考える。そして最終的には個々が「自立」していくこと。この制度を通して、そういう方向に向かっていければと思っています。

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カテゴリ:働き方