広がるレーザーの可能性。「見える」が変わる世界を体験!


こんにちは。広報担当のサティです。
インテージグループは2016年、オープンイノベーションの一環として、SBIインベストメントと「INTAGE Open Innovation Fund」を設立。コーポレートベンチャーキャピタル(CVC)を通じ、さまざまな会社に投資しています。今回、新しい技術で世界を変える「QDレーザ」を訪問。代表取締役の菅原充さんに、レーザーの技術で視力障がいのあるロービジョン※1向けのアイウェア「RETISSA® メディカル」などを開発した経緯や技術者・経営者としての想いを伺ってきました。

※1
眼鏡やコンタクトレンズで矯正しても視力が0.3に満たない、また見える範囲が狭いなど日常生活に支障をきたしている状態のこと

最寄り駅は「浜川崎」

初めて降り立つ駅「浜川崎(神奈川県川崎市)」。京浜東北線と南武線を乗り継ぎ尻手駅で南武支線に乗り換えれば、終点が浜川崎駅。駅員らしき姿がなく無人駅。鉄道好きには有名な駅のようです。
タイムスリップしたようなレトロ感が、にぎわう商業施設が立ち並ぶ川崎のイメージとかけ離れていて情緒的。


東海道貨物線の立派な線路は、「撮り鉄」の名所らしく、この日もカメラを構える姿がありました。


少し歩くと有刺鉄線越しに見えてきました。これが訪問先QDレーザが入っている京浜ビル。
ここは「テクノハブイノベーション川崎(THINK)」という民間主導の研究・開発支援の施設で、総敷地面積9ヘクタールに建物が20以上点在しています。
QDレーザが使う研究施設には、半導体の結晶をつくるために宇宙船みたいに大きい装置があり、低温の液体、液体窒素を毎日タンクローリーで運んでくるため、このように広い敷地が必要だそうです。


到着すると、代表取締役の菅原充さんと創業メンバーで取締役の幸野谷信次さんが私たちを迎えてくださいました。特許証がずらりと飾られた会議室で、早速インタビューさせていただきました。


大企業からスタートアップへの転換

「私はもともと富士通研究所で量子エレクトロニクスを研究していました。数少ない物理の基礎分野の研究者として、論文を書いたり学会で発表したりするのが仕事。1995年に量子ドット(コロナウィルスより小さい100ナノメートル)の結晶を発見し、それがどんな性質を持っているか10年間調べ、レーザーに応用できることが分かりました。
研究所ですので、その量子ドットレーザー技術を事業部に移管して、光通信の世界で使ってもらおうと思ったのですが、ITバブルの崩壊でその事業部が売却されたという流れもあって・・・。幸い富士通にはCVCがあり、そこで取締役の幸野谷さんと出会い、ベンチャー企業としての道があることを知り今に至っています。自分の研究を事業化させるために2006年の4月、会社を設立しました。4人でスタートし、今は70人弱の社員がいます」


代表取締役の菅原充さん

レーザーの技術から「アイウェア」の開発へ

「レーザーっていろんなことに応用できるんです。たとえばセンシング(センサーを活用し、対象となる物の情報を検知・計測する技術)。スマートフォンの顔認証にもレーザーを使っています。見えないレーザーがあたって、距離をはかり高さや形を認識しているんです。会社をはじめてから通信、加工、センシングの分野は経験してきましたが、もう一つの応用技術であるディスプレーを扱ってみたく、小さい開発からはじめました。
概念は知られていた「網膜に直接画像を投射する技術」を製品化。それを展示会で発表したら、ロービジョンの支援学校※2の先生から電話がかかってきてぜひ使わせてほしいと言われました。実際に持って行き使ってもらったら「見える」という学生が何人もいました。
いまでも盲学校でアイウェアを試してもらうと『あなた、こんな顔していたのね』なんていう声を聞き、ドイツの臨床試験では『父さんの顔を13年ぶりに見た、ずいぶんしわが増えたね』という感動もありました。網膜が健全であれば投射した画像を見ることができるんです」

※2
眼鏡やコンタクトレンズなどで視力を矯正できない人に教育、治療、指導をする大学

アイウェアを体験してみたら驚くほど「くっきり見えた!」

世界中で、ロービジョンとされる人は2億5000万人いると推測されています。今回取材に伺ったメンバーの一人は、いま使っている眼鏡をかけたときの視力が0.3以下。「どんな風に見えるか試してみたい」とアイウェア体験に名乗りをあげました。
「網膜に異常がなければ見えるはず」とおっしゃる菅原さん。「光の点が右に見えるのでそれをのぞき込むように見てみて」とアイウェア「RETISSA® Display II」の装着をサポートしてくださる幸野谷さん。普段眼鏡をかけるのと同じ要領で装着します。


すると、メンバーは「すごい!こんなにくっきり見えるんですか!?」と声をあげました。


この体験では、プロジェクターでスクリーンに投影している映像を、網膜に映し出してそれを見ています。これでおそらく視力0.8くらいの感覚だそうです。
体験したメンバーは、「普段こんなはっきり見えたことがないんです。いつもは、遠くから手を振られたときに、その人の顔が認識できないくらいなので」と感動しきり。「本当にきれいだし、もっと何かが映し出されている感があると思っていたのだけど自然です、外したくないです(笑)」


アイウェア「RETISSA®メディカル」は医療機器認証を取得し、「RETISSA® Display」は先日川崎市から福祉製品として認証されました。今回体験した「RETISSA® Display II」も技術や目指すところは同じ、見えづらい人に見える感動を与えてくれる、眼鏡でもコンタクトレンズでも視力を矯正できない人の新しいデバイスなのです。

人生100年時代のQOL向上のために

目の寿命は70年。100年時代残り30年をどう生きるか。高齢者にとって視力障がいは深刻な問題です。40歳以上の20人に一人が緑内障にかかるといわれ、緑内障患者のうち9割は気づかないうちに視野が狭くなってしまっているといいます。検査して早期に治療を始められれば失明を防げるのに、その情報が広く知られていないことも課題。QDレーザは、手軽に目の検査ができる機器も手掛けています。眼底、視野など大掛かりな装置を使い時間のかかる検査を、手に持てるくらいの大きさで、短時間、しかも自分でもできる簡便な機器を作り、いま臨床研究中。
生活の質(QOL)の向上は、人生100年時代において医療分野の切実な課題。インテージヘルスケア(当時はアンテリオ)が昨年、このアイウェア「RETISSA®メディカル」の有用性などを日本、アメリカ、ドイツの医者にインタビューしました。新しい技術を世に広めるためにはパートナーシップが欠かせません。インテージグループが人の幸せに直結する技術開発にかかわれたことは、嬉しいなと思いました。

「優れた技術・サービスを有する会社との出会いの演出」は、インテージホールディングスでCVCを推進するイノベーションセンターのミッション。インテージグループのリサーチやマーケティング支援、データハンドリングなどの知見を用いて、ベンチャー企業とパートナーシップを組み、より良い社会をつくるために、人がより豊かな生活を送るために、貢献できればいいですね。

Category

事業SDGs
Page Top