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滋賀大学河本教授の前期ゼミを終えて
~産学連携:データサイエンス人材育成プロジェクト~

滋賀大学河本教授の前期ゼミを終えて
~産学連携:データサイエンス人材育成プロジェクト~

 

データサイエンス人材の育成を目指し、2017年4月に日本で初めてデータサイエンス学部を設置した滋賀大学。その滋賀大学と、データサイエンス分野の人材育成および産学連携教育の推進を目的とした基本協定を締結しているインテージグループは、データサイエンス学部1期生が3回生となる今年、本大学データサイエンス学部初となるゼミの支援を行いました。

具体的には、河本薫教授のゼミに対し、「統計技術の習得」だけを目的とするのではなく「ビジネスの課題解決力の習得」を意識した全15回の教育プログラム支援です。

ゼミ開催前のヒアリングで学生から「将来はマーケティング領域」という要望が多かったことから、マーケティングをテーマに決めた河本教授。しかし、自身は大阪ガス出身。データサイエンスといっても製造・工場系のデータを扱ってきましたが、マーケティングデータについては扱った経験が無い状態でした。

そこでインテージグループは、これまで培った知見をベースに、実際にあるビジネス上の課題と実データを提供し、課題設定から必要データの設定、抽出、分析はもちろん、課題解決の道筋をレポーティングするまでをカバーするプログラムを提供。プログラム策定はもちろん、当社のデータサイエンティストが実際に滋賀大学へ足しげく通い、教えるという、企業が能動的に教育に参画するという点で国内における珍しい産学連携の型となります。

ゼミでは3人一組となり、1つのチョコレートブランドの新しい販売施策を提案するというゴールに向け、販売傾向の分析、競合ブランドの把握、購買者の属性、購入場所、ブランドの認知やイメージ、購入意向といった実際のマーケティング担当者の実務に近いことを行ってもらいました。

 

 

"新しい販売施策を提案する"ことがゴールなので、ただ分析するだけでなく、分析結果を相手に理解してもらうことまでを目的化。ただし、学生がビジネスにおけるルールを理解した上で、ビジネス人に伝えることはとても難しいことです。今回、株式会社電通(電通若者研究部・湊研究員)にもご協力いただき、ビジネスの基本からアイディアの出し方・正しいプレゼンテーション方法についての講義もしていただきました。

6月4日に実施された中間発表。
初めてマーケティングデータに触れたとは思えないほどの発表内容でしたが、ビジネスにおける「問」に対する「解」の説明には至ってない部分に課題を感じる結果でした。

フィードバックを担当したマーケティング実務者からは、
「結論までの論理が飛躍しすぎていて分析になってない」
「あなたの計算した結果ではそうなっているけど、本当なの?」
などの厳しい意見が飛び交いました。

そして去る7月23日に実施された最終プレゼン。
自身が分析結果から導き出した仮説を証明するために、提供されたデータのみならず、自らアンケートを実施したり、SNSから消費者の声を拾ったり、実際の売り場を見に行って競合との陳列状況を確認するまでのレポートが仕上がっていました。

あるチームは販売促進施策のターゲットとなる消費者像を作り上げるために、"木村エリカさん、33歳の独身。一人暮らし、年収380万円、自己主張が強く、インスタグラムを頻繁に使う"というようなペルソナを設定。施策の実現性を高めるための提案を行っていました。 また、別のチームでは、自分たちの施策効果が数億円であるとの根拠を示すだけでなく、その販促施策における費用まで試算し、利益ベースでの施策提案するほどでした。

評価者であるマーケティングの実務者からの質問もビジネス現場さながらです。
「なぜ、弱みをカバーする施策だけなのだろう?」
「強みを生かして寡占を目指すようなことも考えました?」
などと、インテージも参加させていただくことが多々ある、一般事業会社のマーケティング会議でお伺いするような質問が飛び交います。

 

 

考えてみると、たった3ヶ月半の期間でここまで成長した学生に驚きと感動を感じます。
ビジネス知識、業界知識、業界のデータなどはすべて初めて体験したもの。学生の意欲に対して、ビジネスサイドも教育者の一人として本気になり、しっかりと寄り添うことが大事だと実感しました。

日本における教育は、「問」と「解」が一対になっている問題をどれだけ答えることができるのかを求められることが多いと思います。しかし、本教育プログラムでは、「問」と「解」が一対になっていない問題を解くことを目的としています。

なぜならば、実社会におけるあらゆる場において、問いを設定することから始める機会が多いからです。データ処理をして出てくる結果は形式知にすぎず、演習問題にしかなりません。データに縛られるのではなく、考えもしなかった暗黙知。すなわち、問いを設定する力こそが重要だと思うからです。

学生がこのような経験を多く積むことは、将来ビジネスで活躍できる力になっていくと思いますし、その機会を提供していくことが企業としての使命だと感じています。

 

中島 慶久
株式会社インテージホールディングス
アルゴリズム事業準備室 特命担当

ソフトバンク、トムソン・ロイターを経て、マーケティングリサーチ会社で事業企画・商品企画に従事。2017年、インテージ入社。先端技術部門・R&Dセンターに従事し、当社グループアセットを活かした最新技術や新規事業分野の開拓に従事
2019年4月1日より、立ち上げに参画したアルゴリズム事業準備室も兼務

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