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これからのデータサイエンス人材に必要な"イメージする力"

これからのデータサイエンス人材に必要な"イメージする力"

 

電通の湊と申します。

2019年1月1日より、クライアント様の"ビジネス開発支援"や"共創"をテーマとして発足した、京都ビジネスアクセラレーションセンターという部署で、「若者」・「テクノロジー」をテーマに多種多様なプロジェクト立ち上げを行っております。(京都ビジネスアクセラレーションセンターの取り組みの一例として、事業共創スペースの運営 https://engawakyoto.com/ や、イノベーションワークショップの提供 https://dentsukyoto.com/rca/ など)

インテージさんとはこの4月より滋賀大学データサイエンス学部の河本ゼミの前期講座を一緒にお手伝いをしておりまして、12名の学生・河本先生・インテージグループの皆さまと共に、学生の皆さんにとっては初めてとなる前期ゼミの濃密な4カ月を一緒に過ごさせていただいています。未来のビジネスの一線で活躍するデータサイエンス人材を1人でも多く輩出する一助となればと考えております。

さて、この「データサイエンス」×「ビジネス」を教える河本ゼミを通じ、未来のデータサイエンス人材に僕が強く伝えたいことは、"イメージする力"です。

 

"イメージする力や材料"を学生には全力で伝えたい!

"イメージする力"とは、どういう力か? 少し、僕の過去のお話をさせてください。

かつて自分が大学生だったころのお話です。
小さいころからの夢であった、"モノづくり(360度の映画館のようなものが作りたかった!)"がしたく、大学では工学部に入りました。ただ、憧れて入った工学部のはずなのに、なんなら学者になりたいと思っていたのに、学生時代の所謂"研究"は正直面白くなくて。当時を振り返ると、モノづくりをやっているというより"部品の素子を作っている"ような感じで、「これが社会に活きるのだろうか?」というイメージが全く持てなかったという経験があります。モノを作るというよりは、日々細かな作業している感じ。まぁ楽しくなかったです(笑)
こんな風に学校の勉強や研究をとらえている学生さんも多いのではないかな?と思います。

しかし今、ビジネスの現場を少しずつでも理解し、勘所が見えてくると、学生時代に、例えば、統計解析やプログラミング言語、シミュレーション構築手法などをもっと深く学んでおけばよかった!とか、もう少し関連業界の論文を読んでおけばよかった!とか、もっと突っ込めば、自分の研究が行政や企業からどう注目されているか調べておけばよかった!などと振り返ることが多く、勿体ない時間を過ごしてしまったなぁという思いが強く残ります。

つまり、当時の自分は、
・この先の人生に何が起こるのか?
・どういう事が社会から、いま注目されているのか?
・アカデミックとビジネスがどう結びついているのか? などなど、
"未来や社会やビジネスを、イメージする力"がなかった。という事です。

一方で、「そんなこと、ちょっと想像したらわかるでしょ」とか、「ちゃんと自分の頭で考えないから、そうなるんだ」とか、という声が聞こえてきそうで、耳が痛いのですが。

 

 

当時の自分自身を振り返ると、学生という立場上、情報量も幅も少なく、「未来や社会やビジネスを、イメージするための・考えるための"材料"」が不足してたのではないかなと思いました。だからこそ、データサイエンスという、ともすれば手法論に偏りがちな業界でこそ"イメージする力や材料"を学生には全力で伝えたい!と思っています。

僕は電通の中で1つの職種で長年歩んできたわけではありません。メディア担当営業やデータ分析、若者研究など、色々な現場を経験してきたタイプの人間です。そんな僕ができるのはデータ領域がわかる人間として、さまざまなキャリアを歩んだ人生の中で得た知見である「生々しいビジネスの現場の話」や「ビジネスで実際に使えるアウトプット」を提示することだと感じています。

当然の事ですが、「学生」と「社会人」の「あたりまえ」は違います。

これは1つの例ですが、データサイエンスを学ぶ学生の「あたりまえ」は「分析ステップ論の習得」や、「分析結果の確からしさの検証」かと思います。しかしビジネスにおいては「分析結果を読み解く行為」や、「結果を効果検証した上でレポーティングする行為」までが「あたりまえ」です。仮説・課題設定から説得するための材料(定量・定性)抽出、その後の分析はもちろんのこと、レポーティングやプレゼンテーションスキルなど、"データサイエンス=Pythonが使えます"みたいなことだけではビジネス上では通りません。「KPI」なんて言葉は、学生の時に聞いた事がなかった(笑)

そのような違いを敢えて提示しながら伝えていくことで、彼らにも見えてくる世界があるのではないか?と、個人的に思っています。「今の勉強ってこういう風にするとビジネスになるかもしれない」とか、「データサイエンスを商売にするにはこういう視点が大事」とかを、考えられる材料やきっかけになればいいな、と。

彼らの人生の少し先を、"イメージできやすい"もので提供し、自分自身の"未来のあるべき姿"を認識してもらう。あるべき姿をイメージできれば、その実現手段や真に必要な学びが選択できる。これは問題解決手法でいうところの"バックキャスティング"ですが、自身が必要だと思うからこそ各々が主体的になり、学びも深くなるのではないかと考えます。

今、Deeptech領域では、学校発ベンチャーが増えています。
アカデミック領域がビジネス領域に染み出してきているという事は、目に見えて明らかです。そういった意味では、この機会を通じて「学生には学校にいるというリソース」「ビジネスサイドは、ビジネスサイドにいるというリソース」を出し合いながら、将来的には何かを共創出来る関係性を構築することが理想であり、幸せな事だと感じています。

4月から2カ月。ゼミも中盤戦です。学生はもの凄い成長を魅せてくれています。
このゼミの出会いを通じて共創した何か――これは個人の夢物語ではなく、現実にできるのでは?と楽しみにしています。出会ったすべての学生・河本先生・インテージグループ関係者の皆さまに感謝しつつ、この3者のボードで、よりよい社会を創っていくための面白いビジネスが生まれることを、しっかりと"イメージ"して、最後まで寄り添っていきたいと思います。

 

湊 康明
株式会社電通 関西支社


2011年電通入社。京都大学大学院工学研究科修了。
統計解析スキルを生かした「データ分析業務」と、"電通若者研究部"研究員として、「若年層のインサイト研究」を行った経験から、現在は、インサイトとテクノロジーを組み合わせたPJ設計業務を行っている。

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