I
N
T
A
G
E
INTAGE

行動経済学における意思決定バイアスとナッジの社内セミナーを開催

行動経済学における意思決定バイアスとナッジの社内セミナーを開催

インテージグループR&Dセンターでは、特定の分野に応じて、専門的な知識の獲得や研究検討などを行う分科会を設立しています。分科会は、グループ間の垣根を越えて、様々なバックグラウンドのメンバーで構成されています。その分科会の1つである行動経済学分科会では、2018年からインテージグループの事業やサービスを強化するために、行動経済学の理論に基づいた研究および応用テーマの推進に注力をしています。

このセミナーは、行動経済学分科会が主催し、インテージグループの社員に行動経済学やナッジの知見を幅広く共有すること、その知見を事業やサービスの強化につながるきっかけ作りを目的としています。学術的な理解を深め、個々人の業務や課題に活かせるよう、前半は行動経済学をご専門としている大阪大学の佐々木周作先生をお招きし、ご講演をいただきました。後半は、分科会メンバーで検討を進めている当社のサービスや社内コミュニケーションなどの具体的な課題を題材に佐々木先生を交え、ディスカッションを行いました。

 

意思決定のバイアスや行動経済学の観点による社会的コミュニケーション、ナッジの価値や課題について、「行動経済学とマーケティング」と題して佐々木先生にご講演いただきました

 

【外部講師】

大阪大学 感染症総合教育研究拠点
科学情報・公共政策部門 行動公共政策チーム 行動経済学ユニット 特任准教授 佐々木周作先生

 

【ディスカッションメンバー】

行動経済学分科会メンバー 19名

 

【概要】

インテージグループの主な事業領域であるマーケティングリサーチにおいて生活者の行動を理解することは不可欠です。近年、行動経済学の分野でも人の行動に関する知見や人の行動変容の事例が増えています。これらのナレッジはマーケティングリサーチ領域へ応用することにより、当社の新たなサービスの創出だけでなく、既存サービスの強化や改善、組織パフォーマンスの向上など幅広く活用できる可能性があります。そのためには、正しい知識を有識者から得ることが重要だと考え、私たち行動経済学分科会は、インテージグループ社員を対象とし、有識者をお招きした行動経済学セミナーを開催しました。

 

ナッジや意思決定でのバイアスを、具体例を交えてわかりやすく解説

佐々木先生は、まず、行動経済学は、望ましい選択ができず失敗してしまう現実的な人間像を対象に、非合理的な選択をもたらす意思決定の癖(バイアス)や、より良い行動に導く手法(ナッジ)を取り扱う学問であると説明されました。次にバイアスの例として、現在の選択で誘惑に負けてしまう「現在バイアス」が存在することや、現在バイアスが強い人の「先延ばし傾向」について、現在と未来の選択の違いを示しながら、解説していただきました。また、先行研究から、子供の頃に宿題を後回しにする傾向と、成人後の肥満率や飲酒・喫煙などの習慣に関連があることや、佐々木先生のご研究から、長時間残業に後回し傾向や、不平等の嫌悪が要因としてあることを紹介されました。後半は、行動変容の介入方法である「デフォルトの変更」「損失の強調」「他人との比較」「コミットメント」について概説され、医療現場での抗生剤の処方を抑制する研究や自治体におけるワクチン接種を後押しする事例を紹介されるとともに、基本的な考え方やアプローチを教えていただきました。

 

アンケートの品質向上や組織パフォーマンス向上に向けた実践的ディスカッション

ディスカッションでは、行動経済学のアプローチを用いて現場における課題の解決に挑んでいる行動経済学分科会のメンバーと議論しました。1つめのテーマでは、当社の新規サービスの創出や既存サービスの強化・改善をテーマとし、アンケートの回答と実行動の乖離について、先生に伺いました。佐々木先生は、高い信頼性のある行動指標とアンケートを突合することで実行動に近しい解釈をすることが可能になるのではないかとアドバイスされました。2つめに、当社のモニター施策をテーマとし、当社での研究成果や施策について、先生から次の研究に向けたアドバイスをいただきました。3つめに、組織パフォーマンスの強化のひとつとして会議の効率化・活性化をテーマとし、ディスカッションをしました。先生は、公共財の供給行動に似た会議の特徴に目を向けて仮説を立てて、検証することで具体的な対策につながることを助言されました。

 

セミナー参加者からは次のステップにつながるフィードバックをいただきました。

・現業、チームのマネジメント、それぞれに活かせる点が多いと思い、何回かのシリーズに分けて学びたいと感じます。
・ナッジについての理解が深まりましたが、業界やビジネスに置き換えた時にどのように置き換えればよいのかが難しそうでしたので勉強が必要と感じます。

 

最後に、今回のセミナーを通じて、分科会のメンバーに限らず、多くの社員が行動経済学に対する理解を深め、日々の業務適応を考えることで、お客様やパートナーへの提供価値が高まることをご期待ください。

 

・佐々木周作先生プロフィール

大阪大学 感染症総合教育研究拠点
科学情報・公共政策部門
行動公共政策チーム 行動経済学ユニット 特任准教授


2022年4月 - 現在 現職
2020年4月 - 2022年3月 東北学院大学経済学部 准教授
2018年6月 - 2020年3月 京都大学経済学研究科 特定講師
2008年4月 - 2011年6月 三菱東京UFJ銀行 総合職行員

【ご専門】 行動経済学・実験経済学,ナッジの政策応用
https://www.cider.osaka-u.ac.jp/researchers/sasaki_s.html

 

・著者プロフィール

アフィカ アディラ
株式会社インテージ
事業開発本部 先端技術部 技術開発2グループ


表情解析を用いたアプリの開発などのシステム開発を経て、2018年にインテージに入社。先端技術部にて幅広い生体反応計測を活かす研究開発に従事。
 

Academic Programs, Life Insights, Events