I
N
T
A
G
E
INTAGE

アカデミアと連携した技術活用支援を目的とした社内セミナーの開催

アカデミアと連携した技術活用支援を目的とした社内セミナーの開催

インテージグループR&Dセンターでは、組織内のナレッジの蓄積のために当グループ内で技術情報の発信を行ってきました。しかし、技術情報の発信は、必ずしも現状の事業領域(主に営業・商品部門)の直近の課題解決に直結するものではありませんでした。

そこで、本年度から、現状の事業領域の課題を洗い出し、課題解決の一助となるよう外部講師をお招きした学術的な技術情報の機会、事業領域担当者自らが外部講師との対話を通じて情報を得ることができるディスカッションの機会を設けた「テクノロジーとマーケティングセミナー」を開催しています。

このセミナーは、インテージグループでクローズ開催することで事業領域担当者からリアルな課題が提示され、リスナー社員は技術知と実践知の両方の知見を得ることができます。

 

-回答バイアスとはなにかを知り、実務において回答精度を向上する施策を松田先生のご研究を踏まえてご説明いただきました。

 

 

【外部講師】

調査メソドロジスト 松田映二先生

 

【ディスカッションメンバー】

インテージ社員 3名

 

【概要】

インテージグループの主な事業領域であるマーケティング支援の一つ、調査設計における品質向上を目的とし、外部講師から理論ベースのアプローチで、体系立てた品質向上プロセスの理解促進を目指し、「選択肢配置による回答バイアスの特性 ―初頭(初印)効果発生の構造とその応用―」と題して、回答バイアスの発生機構について学びました。1つめに、初頭効果(最初のほうにある選択肢が選ばれやすい)のではなく、初印効果(印象に残る選択肢がすぐに選ばれやすい)の影響を受け、それはレイアウト・配置などの影響を受けることを解説されました。2つめに、回答バイアスが発生する要因は、消極的(いわゆる適当回答)な回答だけでなく、積極的な回答でも起こることについて、システム1(速い思考)の観点から解説されました。3つめに、2つめのバイアスを逆に利用して正しい回答を得るための調査設計のヒントとして認知過程モデルの視点から2つの道を仮定して解説されました。

 

-実際に現場でよく発生する、回答バイアスに関する課題を考え、解決策を松田先生と討論しました。

 

 

その後のディスカッションでは、「回答精度向上のために ~バイアス軽減対策~」と題し、まず顧客から寄せられた回答バイアスを懸念する具体的なご意見を提示し、レイアウト・配置に関する議論がされました。先ほどの初印効果に加え、選択肢の順次表示とランダマイズ化どちらが正しい回答を得ることができるかアドバイスを頂きました。一般的にランダマイズするだけで、回答バイアスを低減できていると考えている人は多いが、実はランダマイズすることによって選択肢の提示順で印象度合いが変わるため、ランダマイズするだけでは不十分、ランダマイズした後の印象度合いにも着目したほうが良いとご指摘を頂きました。続いて、回答バイアスを低減するだけではなく、逆に利用することについて話し合われました。先生の研究結果、力学のモーメントの概念から選択肢配置のモーメント(M値)で考えると、主に男性や学生は、M値が高い傾向があり、回答バイアスが高い傾向があることが明らかになっているが、実は慣れ親しんだ自信を持った判断をしがちなだけではないかという仮説を挙げ、このような積極的な回答姿勢に基づく調査設計が求められるのではないかと述べられました。ディスカッションに参加したリサーチソリューション部の二瓶さんは、システム1に着目した研究を行っており、システム1の結果を反映することでオンライン調査でも実環境の結果に近づける取り組みを行っており、研究結果を基に議論を行いました。

 

-今まで感覚で捉えていた「回答バイアス」について構造的な理解を促していただき、論理的な解決策のヒントになりました。

本社内セミナーに参加していただいた方には、以下のような、調査をもっとお客様の疑問に応えて良くしていきたいと意欲溢れるコメントを頂きました。

 

・特に初印効果や、属性によるモーメントの違い)はとても興味深く聴かせていただきました。
・1つ1つのテーマをもっと掘り下げて聞いてみたいと感じました。
・お客様からの質問などは、もっと他にもたくさんあるので、より多くの意見をもらいたいと感じました。

 

ディスカッションに参加した企画・分析を担当しているHさんは、日ごろの業務では、「バイアスかかる・かかりそう」を、感覚や経験値、つまり自分の嗅覚に頼って対応しているケースが多いことを痛感しました。バイアスの種類と構造を学び、私には少し難しかったですが、よい刺激になりました。

 

・松田映二先生プロフィール

2020年5月 - 現在 YORONresearch Survey Scientist
2014年1月 - 2020年3月 埼玉大学 社会調査研究センター 准教授
2010年10月 - 2013年12月 調査コンサルタント
1988年4月 - 2010年9月 朝日新聞社 世論調査部 記者・調査メソドロジスト(調査法開発・選挙予測)
1990年4月 - 1992年3月 統計数理研究所 受託研究員

 

・著者プロフィール

小林 春佳
株式会社インテージ
事業開発本部 先端技術部 R&Dグループ


生体計測をメインとするマーケティングリサーチャー、コンサルタントを経て、2019年インテージ入社。先端技術部にて行動科学分野の知見を活かした研究開発や新規事業開発に従事。組織内のナレッジの蓄積のため、情報発信業務にも注力。

Academic Programs