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2年目を迎えた、滋賀大学との産学連携「データサイエンス人材育成プロジェクト」

2年目を迎えた、滋賀大学との産学連携「データサイエンス人材育成プロジェクト」

 

インテージグループはサステナビリティへの取り組みの一つに、「明日を拓く人材を育成・輩出します」を掲げています。インテージグループとして、ビジネス力を起点に、「データサイエンス力」と「データエンジニアリング力」を強化し、データ価値向上を担う人材育成につなげ、人材の社会での幅広い活躍を支援することを目標としています。

その取り組みの一環として、昨年から滋賀大学データサイエンス学部の河本薫教授のゼミと統計技術とビジネスの課題解決力の習得を目的としたデータサイエンス人材育成プロジェクトを推進しています。

昨年度、今年度と2年間を通じた本プロジェクトについて、河本薫教授にお話を伺いました。

※1年目の産学連携ゼミに関する記事はこちら
滋賀大学河本教授の前期ゼミを終えて ~産学連携:データサイエンス人材育成プロジェクト~

 

―産学連携の教育を通じて、答えがない世の中に答えを出せる人材を育成する

私が産学連携による教育を通じて目指していることは、答えのない解に対して答えを出せる人材を育成することです。インテージさんのサステナビリティに掲げてある「明日を拓く人材を育成・輩出します」に近いことのような気もします。

現在のデータサイエンスの授業においては、与えられた問いに対して正しい答えを導き出すという教育が多いように思えます。しかし、学生が社会に出た時に求められることは、自ら問いを考えること、また、正解のない問いに対して答えを導き出すことの方が圧倒的に多いです。

世の中では、データサイエンティストの定義がひとくくりにされているように思えますが、自ら問いを考え、正解のない問いに対して答えを導き出すためには、「ビジネス」「機械学習」「理論」の3要素が必要になってきます。「機械学習」「理論」については、大学側でも教えることができますが「ビジネス」については、企業の方々の協力がないと教えることができません。

私は、データサイエンティストを志す学生に、自ら問いを考え、正解のない問いに答えを出せる人材になってもらいたい想いがあります。そのためには「ビジネス」も大学で学ばなければいけないので、自身のゼミを通じて、産学連携教育を推進しています。

 

 

―データサイエンスの学生に、データサイエンスだけでは解決できないことに気づいてもらう

私は、産学連携教育を行う際にゼミのねらいを決めています。インテージさんと電通さんと連携したゼミについては、「データと思考力を使って、納得感とサプライズのあるストーリーを作る。この経験により、データと分析手法だけで物事が解決するという概念から脱却してもらう」です。

データサイエンス学部の学生は比較的理系色が強く、問いに対して正しい解を重視する学生が多いです。また、データサイエンスについても、与えられた問いに対してデータと手法を用いて、正しい解を導き出すようなイメージが強いのではないでしょうか。

本ゼミでは、3人一組で各チョコレートブランドの担当を決め、インテージさんのデータを活用しつつ、各チームが課題を定義します。その課題を解決するためのマーケティング施策を立案し、電通さんからプレゼンテーションについて学んだことを活用して、最後に各チームが考えたマーケティング施策をプレゼンテーションするという内容になっています。

本ゼミにおいて、データと分析手法は、課題や施策を納得してもらうための手段であって、解ではないのです。本ゼミにおける解は、自身が考えた課題に対して解決する施策を納得してもらうことなのです。そのためには、プレゼンテーションのスキルや施策における論理的なまとめ方などのデータサイエンスとは違うことが必要になってきます。

 

 

―コロナ禍によるオンライン授業だからこそ、コミュニケーションを大事にする

3人一組のゼミですが、マーケティング施策を短期間でプレゼンしなければいけないため、分析担当、プログラミング担当、企画担当など役割分担するのでチーム内のコミュニケーションが重要になってきます。また、初めてのマーケティング施策立案とのこともあって、わからないことに質問するというコミュニケーションも重要です。

今年はコロナ禍の影響で、オンラインで授業しなければいけないという大きな変更がありました。コミュニケーションが大事な本ゼミがオンラインの授業によってうまく機能するかが非常に不安な状態でした。

しかし、ZoomやSlackなどのコミュニケーションツールを活用することで、リアルに会話するだけだった昨年よりも学生との接点が増え、学生からの質問がより多くなりましたし、テキストベースでの質疑応答をすることで、より論理的にまとめられた質問内容になったので、結果的にオンラインの授業でよかったと感じました。

一番大きく変わったことは、2年目ということで私自身が学生に対する接し方を理解できたことで、よりコミュニケーションを大事にできたことかもしれません。(笑)

 

 

―お互いを想う気持ちが、産学連携教育の成功に導く

産学連携教育は、企業の協力を得てはじめて成り立つのですが、各企業は営利目的で事業を行っています。しかし、売上にならない産学連携ゼミに、大切な従業員の稼働を割いていただき、自社の大切なデータなどのコンテンツを提供していただけることに非常に感謝しております。

企業の方々も未来を担う人材育成や社会貢献の想いを持っておられ、それの実現に協力してくれる大学や研究機関を求められているのだと思います。産学連携教育というのは、大学・企業の双方が同じ想いを持ちつつ、利害関係を調整し、初めて前に進めるのだと思っています。

しかし、大学・企業という組織体としてお互いが想い合うだけでは、産学連携教育は真の成功とはいえないと思っています。なぜなら目的は産学連携ではなく、教育という点だからです。学生がよりよく学ぶために、大学だけではできないことを企業と連携し、学びの幅を広げるということになります。やはり、最終的には学生が何を学び、何を身につけるのかが大事なことだと思っています。

2年間インテージさんと一緒にゼミを実施させていただきましたが、インテージの講師の方は学生に寄り添い、学生目線でゼミを進めていただけて非常に感謝しています。社会に出たこともなく、ビジネスも経験していない学生にとっては、業界知識、業界に特化したデータの理解から始めなければいけないのが現実です。私は産学連携教育というのは、企業の方に学生を想う気持ち、寄り添う姿勢などの愛のあることが産学連携教育の成功に導くのだと思っています。

 

 

・河本薫教授プロフィール

滋賀大学データサイエンス学部教授
兼データサイエンス教育研究センター副センター長
1989年 京都大学工学部数理工学科卒業。
1991年 京都大学大学院工学研究科応用システム科学専攻修了。
1991年 大阪ガス入社。
1998年 米ローレンスバークレー国立研究所でデータ分析に従事。
2018年4月1日より現職。

 

・著者プロフィール

中島 慶久
株式会社インテージホールディングス
経営企画部 / R&Dセンター

ソフトバンク、トムソン・ロイターを経て、マーケティングリサーチ会社で事業企画・商品企画に従事。2017年、インテージ入社。先端技術部門・R&Dセンターに従事し、当社グループアセットを活かした最新技術や新規事業分野の開拓に従事。
2020年7月より、経営企画部にてグループシナジーの推進、R&Dセンターにてアカデミア連携の推進に従事。

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