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なぜ、AI人材の育成に能動的な企業支援が必要なのか

なぜ、AI人材の育成に能動的な企業支援が必要なのか

現在、さまざまなメディアで「AI人材の不足」に警鐘が鳴らされています。近年、データサイエンス分野専門の学部を新設する大学が増え、政府も戦略として全大学生・高等専門学校生へ必修でAIの初級教育を行う政策を打ち出しています。今回はインテージグループが滋賀大学データサイエンス学部と連携して取り組む、データサイエンス人材の育成についてお伝えします。

 

図1

 

希少なデータサイエンティストを巡る熾烈しれつな獲得競争

デジタル技術の進化やIoTの普及に伴い、取得できるデータの量、種類、取得頻度は圧倒的に増加しました。2020年における全世界のデジタルデータ量は44ゼタバイト(44兆ギガバイト)に達するといわれ、いまやすべての業種・業界で多種多様なデータの保有・活用が推進されています。

しかし、総務省発表の「安心・安全なデータ流通・利活用に関する調査研究」(「平成29年版情報通信白書」より)によると、データの収集・管理に関わるコストやビジネスにおけるデータの利活用方法への懸念、データを取り扱う人材の不足などの声が上がっており、まだまだこのような課題の解決に苦慮している企業が多いのが現状です。

データを利活用する人材という意味で、「データサイエンティスト」という言葉が使われ始めたのは2010年前後です。以降、この人材の需要は爆発的に増しており、世の中では今、希少なデータサイエンス人材を巡る熾烈な獲得競争が起こっています。

「データサイエンティストが社内にいなければ、外部から調達しよう」ということなのですが、育成しない限り、その人材が払底するのは明らかです。インテージグループは、この本質的な課題、すなわち「データサイエンス人材の早期育成方法の確立」に注目。弊社サービスの発展だけではなく、データの利活用によってもたらすことができる「豊かで可能性の広がる社会の創造」に向け、一人でも多くのデータサイエンティストが生まれる環境を整えていくことを使命と考えています。

 

図2

 

ビジネスの課題解決力を習得する教育プログラム支援とは

滋賀大学は一昨年、国内初のデータサイエンス学部を開設。一期生がちょうど三回生となり、学部として初めてのゼミが始まりました。インテージグループは「データサイエンス学部河本薫ゼミ」に対して、「統計技術の習得」だけを目的とするのではなく、「ビジネスの課題解決力の習得」を意識した教育プログラムを全15回にわたり支援します。

同学部教授・河本薫氏のゼミには、株式会社電通も協力。両社で実際に存在するビジネス上の課題と実データを提供します。ゼミは課題設定や必要データの選定、抽出、分析はもちろん、報告提案用のレポーティングまでをカバーする全15回にわたるカリキュラムです。学生は題材ごとに4チームに分かれて競い合いながら学びます。

この支援は、単なるデータ提供やセミナー開催にとどまるものではありません。プログラム自体の企画や実際のビジネス課題や実データの提供、データサイエンティストである弊社社員が講師を務めるなど、国内で類を見ない、企業による能動的な教育への参画になると考えています。

データサイエンスをビジネスに活かすためには、大学で学ぶデータサイエンス論だけでなく、「より良い意思決定に導く」ためのデータ選定、モデル構築、そしてレポーティングが必要です。これにはデータサイエンティストが創造力をもってアプローチしなければならず、そのために活きたビジネス題材とビジネスルールの理解が必要だと考えます。

インテージが創業以来60年間培ってきた 「ビジネスの課題解決力」「データサイエンス力」「データエンジニア力」で、滋賀大学と日本版の課題解決型学習を推進。一定の型を創ることで、現在警鐘が鳴らされているAI人材の不足に対して、その解決、すなわちデータサイエンス人材の育成に貢献していきたいと考えています。

 

図3

 

滋賀大学データサイエンス学部教授・河本薫氏のコメント

「私は、昨年4月に企業でのデータ分析経験のある教員として赴任しました。

私の教育目標は、『データやAIの普及により社会や企業を取り巻く環境が激変する中で、社会や企業を正しい方向に進化させていく原動力となる人を育てること』です。すなわち、データや分析手法を使いこなせる専門性と、社会や企業にとって何が正しいか見極める判断力と、困難な状況でも先頭に立って推進するほどの使命感を持った人材を育てることです。

そのような人材を育成するには、従来型の講義や演習といった『正解のある学習』だけでは足りません。学生時代から実問題に取り組み、自ら課題を発見し、自ら仮説を立て、それに沿ってデータを分析し、それを人に伝える、そういった一連の流れを学ばせることによって育てられると思っています。

具体的には、大学にいながらも企業内での実際のデータ分析のミッションを与えたいと思っています。学生に、企業の実課題について実データを使って解決する機会を与えたい。特に、具体的な課題をあらかじめ提示するのではなく、企業の悩みや願望だけを頼りに自らの思考力と質問力で課題発見させたい。また、分析結果を報告して終わりではなく、分析結果を活かして問題解決するところまでさせたい、そう思っています。」

 

図4

 

インテージのデータサイエンティスト・増田純也のコメント

「今回のプログラムでは、データ分析手法を学んだ学生たちにビジネスで用いられている購買データやアンケートデータを提供し、マーケティング業務における意思決定にどのように活かすかを学んでもらいます。学生に『データ分析の目的』を常に意識してもらえるような講義にできたらと考えています。

マーケティング領域でのデータサイエンスの目的は『ビジネス上の意思決定を行う人間に対して、より良い意思決定に導く』ことです。この点はデータサイエンス領域の書籍でよく紹介される、物体検知や異常検知とは異なります。

マーケティングでは人への説明や理解(解釈)、物体や異常の検知ではモデルの精度やシステム負荷といった点が重要になります。ただ、マーケティング領域の目的は、実際のデータや企業の協力がない状態で意識することは難しいのが現状だと思います。

今回は、このような実際のビジネス課題を意識して実習できるとても貴重な場。学生には早いうちから意識してもらい、このゼミから日本を代表するデータサイエンティストが生まれるように、できる限り多くのことを伝えられたらと思っています。」

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